「西野亮廣エンタメ研究所」という館員数7万1000人(2020年12月現在)のオンラインサロンの運営、現在は絵本作家として活躍する西野亮廣さんの一冊。
とにかく読んでいて胸が熱くなる。
著者が絵本を書き始めたきっかけとなる話や、プペル制作に至るまでの道のり、クラウドファンディングでの資金調達や、絵本を売るためのマーケティング活動、ドブ板営業のようなメディアでは語られることの少ない、地道な宣伝活動まで、西野さんが歩んできた道のりが本書では語られています。
著者は冒頭の章で、
「えんとつ町」は夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる現代社会。
ファンタジーなどではありません。
それら全ては僕らの身の周りで実際に起きていることで、きっと今この瞬間も、どこかで殺されている夢があります。
ご多分に漏れずに僕にも、日本中から何年も攻撃され続けた時代がありました。
「えんとつ町のプペル」を書くきっかけになった時代です。
(p.15)
と始め、「FNS27時間テレビ」でひな壇での出演を断ったことがきっかけで、バッシングを受けた過去について、語られています。「えんとつ町のプペル」誕生の背景には、とても「方法論」だけでは語りつくすことのできない様々な出来事がありました。(p.17)
あの日の僕を襲った様々な出来事や、そのときの僕の感情に触れずに語る「方法論」には何の意味もありません。広告戦略を語る以上、途中で具体的な方法論が出てきますが、くれぐれも、これは、強い人の為の文章ではありません。
これは、今にも灯が消されてしまいそうな人に寄り添い、励ますことを目的とした文章です。
(p.18)
テレビでは語られてこなかった内容を含め、紹介していきたいと思います。
この本から得られるものとして、
・夢をかなえる思考
・マーケティング思考
それでは内容に入っていきましょう。
目次
山に登って絶望を見た
競争に参加した時点で負けが決定している
同世代の誰よりも速く山を登りました。
しかし、その山の頂上から見えたのは、タモリサンや、たけしサンや、さんまサンといった偉大な先輩方の背中で、彼らの事を追い抜いていませんでしたし、そのまま続けても追い抜く気配もありませんでした。
絶望的な景色でしたが、このとき、その後の人生を左右する大きな気づきを得ました。
それは、「競争に参加した時点で負けが決定している」ということです。
(p.19)
大切なのは、「どこで結果を出すか?」を問い続けることで、「一番」を目指すのならば、競争に参加するのではなく、競争を作る側(ハード)にならなければなりません。
この点に気づいたことで、テレビの世界から足を洗うことを決めたとのこと。
これを決めたのが、「はねるのトびら」で人気絶頂だった時に決めていたというのです。山に登ったからこそ、見えた景色だとは思いますが、競争し続けても疲弊していくレッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンで勝負していくと決めた、そう感じます。
目的を達成する思考法
昔から僕は「目的を達成する為に何をすべきか?」を考えるのではなく、「何をしたら確実に目的が達成できないか?」をリストアップするようにしています。
「報われる努力」に巡り合えるかどうかは「運」が絡んでくるので、コントロールできませんが、「報われない努力」を排除するには「運」が絡んでこないので、コントロール可能です。
ある問題に直面したとき、「自分がコントロールできないコト」と「自分がコントロールできるコト」を明らかにしておくと、無駄な迷いが消えるのでおススメです。(p.20)
非常に参考になる思考法です。私は普段、営業をしていますが、自分でコントロールできるコト、できないコトに対面する場面が多々あります。基本的には、自分でコントロールできないコトの方が多いのですが、できるコト・できないコトを明らかにすることで、仕事の幅が広がる気がします。参考にしてきたいです。
ドブ板営業
メディアで報じられるときは、どうしてもスマートな部分だけが抽出されてしまいますが、裏側はこのとおり、「ドブ板営業」の積み重ねです。
このことはすべての挑戦者と共有しておきたいと思います。
(p.52)
テレビは観られなきゃいけませんし、書籍は読まれなきゃいけないので、「面白みのない努力(エピソード)」がカットされてしまうのは仕方がないのですが、実際のところ、挑戦の現場は「面白みのない努力」だらけです。(p.44)
2012年12月、「オルゴールワールド」のビラを1万枚刷って、都内を走り回る「ポスティング」作業や、2013年1月ニューヨークで個展を出すためにクラウドファンディングを利用した際も、ツイッターで自分の名前で検索をして、自身についてツイートされている人を見つけては一人ずつに声掛けを実施したりなど。2週間で700名以上とやり取りし、585名から531万1100円の支援を頂けたとのこと。
このニューヨークでの個展は盛況で終わったのですが、YAHOOニュースでは盛況の部分しか取り上げられません。プペルの制作に入る前の話ですが、こういったドブ板営業の積み重ねにより今がある、多くの方に知っていただきたい事実です。
ファンとは何か?
僕らはお客さんを、「顧客」と「ファン」と「ファンだった人」と明確に区別する必要があるとして、
「顧客」というのはサービスを買ってくれる人で
「ファン」というのはサービス提供者を応援してくれる人で、
「ファンだった人」というのはサービス提供者を私物化する人です。(p.83)
としています。
SNSやブログでは、現在この考え方が主流となっていると感じます。西野さんは「ファン」をつくることを主眼にしています。
「面白い」を基盤から作る
コンテンツの形を決めるのは何か?というオンラインサロンの中での記事の抜粋で、「能」と「歌舞伎」の話を出し、「コンテンツの形はビジネスモデルが決めている」ということを主張しています。テレビ番組を例にスポンサーから受け取った広告費を「番組制作費」とする中で、予算が決まっている以上、予算以上に費用が掛かる番組は制作できないとし、同じルールで作られたものは、おおむね同じ形になってしまうとのこと。
したがって「まだ誰もやったことのない面白いモノ」を作るには、ビジネスモデルから再構築する必要があります。人はそれを「ビジネス」と呼びますが、僕は「作品作り」と呼んでいます。(p.118)発想の具体化に制限をかけていない作品は、発送の具体化に制限をかけなくてもいい「制作基盤」から作らないと生まれません。
西野さんは自身が手掛けているプロジェクトが他のプロジェクトにどのような影響を与えているかを可視化した「シナジーマップ」を作成しています。
ルールは「AD(宣伝)」「ID(世界観)」「マネー」の⇒で結び、収益化する部分や宣伝を目的とするもの、また、絵本の世界観を表現するものなど、すべての活動を有機的に結ぶことによって、活動の役割を明確化し、そこで発生したエネルギーを循環させ、無駄をなくし、圧倒的オリジナル作品を生み出す為の基盤を作ります。
それぞれの事業からシナジーを意識し、組織や仕組みづくりをし、作者が思い描いた世界の具体化に制限がかからない、この基盤を作ることを重要だと考えています。
まとめ
最後の“ゴミ人間”という章で、挑戦することを選び、しかし、いつまで経っても光が見えず、今この瞬間、もがき苦しんでいるキミに向けて手紙を書いています。
全て、転記したいくらいですが、特に自身に刺さった部分を抜粋し最後とします。
べつに具体的じゃなくてもいい。
「何か面白いことがしたいんだけど、何をすれば…」で十分だ。
いつだって具体的なゴールが見えるのは、手探りで歩き始めた後だ。
今いる場所からは、いつまで経っても見当たらない。
天から降ってくるようなものじゃない。
まずは環境を変えろ。景色を変えろ。
そして、キミに入ってくる情報を変えろ。
歩き出せ。方角はどちらでもいい。
(p.191)
ぜひ手に取ってお読みください。
著者のプロフィール
⇒本の後ろに書かれていることと、簡単に調べたことを記載
著者:西野 亮廣
芸人・絵本作家。1999年に梶原雄太と「キングコング」を結成。その5か月後にNHK上方漫才コンテスト最優秀賞を受賞。2001年には「M-1グランプリ」の決勝に進出。同年深夜番組「はねるのトびら」のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行し人気絶頂だった05年、「活動の軸足をテレビから抜く」ことを決意。09年「Dr.インクの星空キネマ」で絵本作家デビュー。16年、絵本業界の常識を覆す完全分業制による第4作絵本「えんとつ町のプペル」を刊行し、55万部を超えるベストセラーに。
本の目次
はじめに
山に登って絶望を見た
育児放棄をした過去
巡り巡る物語
信じ抜くんだ。たとえ一人になっても。
ファンとは何か?
時代が変わった日
僕らが起こした事件
「面白い」を基盤から作る
鳴り止まないエンターテイメント
「映画 えんとつ町のプペル」の制作総指揮を務める覚悟
忘れないように、忘れられないように
100年に一度のウイルスに襲われた挑戦
日本中から笑われた夢がある
ゴミ人間
著者書籍
・革命のファンファーレ 現代のお金と広告
・魔法のコンパス 道なき道の歩き方
・新世界 等々