今回紹介するのは、伝える力【話す・書く】研究所所長/「伝わる+買わせる」文章の専門家などの肩書をもつ文章のスペシャリスト山口拓朗さんの一冊。
著者は冒頭で、“「要約力」とは、情報のポイントをつかみ、場面に応じて、簡潔かつ論理的にアウトプットする能力のことです”と定義し、―要約力が高い人たちには、ある共通点があり、人に何かを伝えるときに「情報の9割を捨てている」ということ(P.8~9)を主張しています。
本書では、9割の情報を捨てても伝わる、要約のプロセスを以下の3つのステップで分かりやすくまとめられています。
- 情報収集(必要十分な情報を集める)
- 情報整理(情報をグループ分けする)
- 情報伝達(相手に伝える)
(p.10~11)
自分の意見を伝えるときや、あらゆるビジネスシーンで求められる能力である「要約力」をインストールし、今回、私は仕事やブログに役立てようと思い手に取りました。
この本から得られるものとして、
・情報収集力
・情報整理力
・情報伝達力
以上が挙げられます。
本記事では要約の3ステップをピックアップして紹介していきたいと思います。
それでは内容に入っていきましょう。
目次
ステップ① 情報収集(必要十分な情報を集める)
「自分に質問をする方法」で情報の真偽や価値を高める
情報の真偽や価値を高める際に「自分に質問をする方法」が有効です。(p.69)質問の多くは「5W1H」でまかなえますが、特に、「Why」なぜそうなのか?「How」どのようにしてなったか?「If(もし)」もし~だったらどうか?の3点をピックアップしております。
「Why」の答えを手にすることは、「理由」や「根拠」「エビデンス」を手にすることです。それらがあることで、最終的なアウトプットの説得力が高まります。
(p.71)
「How」で導き出した答えは、「今後」や「未来」の行動や展開、対策などにつながる情報になりえます。
(p.71)
「If(もし)」が導き出す情報は、多くの場合、仮設を含む「少し先の未来」です。「少し先の未来」に先回りできる人が、ビジネスで結果を出しやすいのは当然のこと。突発的な問題やトラブルなどへの対応力に優れている人も、おそらく、ふだんから「If(もし)」を使って「少し先の未来」を見ている人ではないでしょうか。
(p.73)
こうした質問を自分に(ときとして相手に)積極的にぶつけることで情報の質を高めていくことができます。(p.70)
情報収集の際に注意すべき点
一方で、情報収集するときに注意すべきこととして、「認知バイアス」を挙げられています。
人は誰でも「認知バイアス」を持っています。認知バイアスとは「思考の偏り」のことを指します。つまり、「思い込み」や「偏見」と言い換えてもいいでしょう。これは、「いい要約」の妨げとなる要因のひとつです。(p.76)
このような認知バイアスによる損失を防ぐ方法は2つ。ひとつは、人間が、「認知バイアス」をもつ生き物であることに自覚的になることとし、一瞬立ち止まって「認知バイアスはかかっていないかな?」と考えることが重要です。
もうひとつは、「メタ認知力」を高めることです。メタ認知力とは、自分の思考や行動を客観視する能力のこと、「認知バイアス」による不利益を被りたくないなら、メタ認知力を高めること、すなわち、自分の思考や行動を客観視する意識を強めましょう。
なお、要約力が伸びやすい人ほど、自分が要約していることに自覚的です。つまり、養われたメタ認知力は、要約プロセス全般において大きな役割を果たすのです。(p.80)
書籍や各種ビジネス文書などから情報収集する場合
書籍や各種ビジネス文書などから情報収集する際には、必ず「目次」に目を通しましょう。目次というのは、そのテキストの中身を端的に表した、究極の要約です。(p.95)
注意すべきは「最初から最後までしっかり読まないといけない」という思い込みです。そういう読み方をしている限り、情報収集の効率は高まりません。(p.96)
ステップ② 情報整理(情報をグループ分けする)
要約のゴールは、アウトプット(話す・書く)を通じて、相手にとって価値ある情報を届けることだからです。つまり、そのゴールから逆算して整理を進める必要がある中で、情報整理するにあたり「具体化グループ思考」「優先順位的思考」の2点の思考を磨く必要があります。
「具体化グループ思考」
「具体化グループ」思考で情報をきちんと整理する。わたしたちが取り扱う情報も、デスクの資料とまったく同じです。似た者同士の情報ごとに整理(グループ分け)しておくことが肝心です。(p.104)「大きなグループ分け」から「細かいグループ分け」まで、情報をきちんと整理できている人は、まるで「検索窓にキーワードを打ち込む」かのように、一発の検索(=命令)で脳から必要な情報を取り出すことができます。(p.110)
「優先順位的思考」
「具体化グループ思考」と同時に、もうひとつ磨いておきたいのが「優先順位思考」です。これは、情報に優先順位をつけるということ。究極的には〈死んでもこれだけは言っておく!〉を選ぶための作業と言えます。(p.111)相手のニーズをいつでも満たせる人は、情報を整理する「具体化グループ思考」とそこから9割をすてるために有効な「優先順位思考」が身についている人です。(p.114)
私も日々仕事をする中で、情報が整理できていない状態や、情報を詰め込みすぎて一番伝えたいことが伝わらないなど、ゴールを逆算して情報が整理できていないことが多々あります。仕事も、それに付随する情報も最初の段取りが肝心であり、”相手にとって価値ある情報を届けること”これを意識していきたいところです。
ステップ③ 情報伝達(相手に伝える)
人に何かを伝えるときの基本は「幹→枝→葉」です。この場合は「幹」は全体図、つまりは〈死んでもこれだけは言っておく!〉です。「枝と葉」は「幹」の内容を具体化した詳細情報です。(p.132)
著者は情報伝達の際に、報連相からプレゼンテーションやスピーチまであらゆるビジネスシーンの使えるトークテンプレートを2種類ご紹介しています。
用件+結論優先型
- 用件(今から話す事柄の全体像)
- 結論(伝えたい事柄の勘どころ〈死んでもこれだけは言っておく!〉
- 理由(結論の理由)
- 詳細(結論についての詳細)
(p.140)
列挙型
- 全体像(いつくポイントがあるか?)
- 列挙1(ひとつ目のポイントは何か?)
- 列挙2(ふたつ目のポイントは何か?)
- 列挙3(3つ目のポイントは何か?)
- まとめ
(p.145)
列挙する数が多すぎてもダメ。口頭で伝えるときは3つか5つ、文書で伝えるときも、多くて7つまでにしましょう。(p.148)
ビジネスシーンで、すぐにでも活用できるテンプレートだと思いますので、どんどん活用しアウトプットしていきましょう。
まとめ
著者は“おわりに”で
何より大事なのは、要約していることに「自覚的になること」です。
わたしたちは、周囲の情報や環境、あるいは誰かの奴隷になってはいけません。
常に主体的に情報と向き合い、その要不要を見極めていく必要があります。
「要約力を強化しよう」の裏メッセージは、「主体的に生きよう」です。
(p.198)
移り変わりの激しい時代の中で、また情報過多な現代社会において要約力を強化し、常に主体的に情報と向き合うことの重要性を伝える一文に感じます。みなさんも、ぜひこの機会に主体的に要約力をインストールしてみてはいかがでしょうか?ご興味ありましたらぜひ本書を手に取って下さい。
著者のプロフィール
著者:山口 拓朗
伝える力【話す・書く】研究所所長。山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、2002年に独立。出版社勤務時代を含めて24年間で3300件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加えて、公園や研修を通じて「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「論理的な伝え方・書き方」「伝わる文章の書き方」等実践的なノウハウを提供。
本の目次
はじめに
第1章 究極の要約は「死んでもこれだけは言っておく」
第2章 ステップ①情報収集―必要十分な情報を集める
第3章 ステップ②情報整理―情報をグループ分けする
第4章 ステップ③情報伝達―相手に簡潔に伝える
おわりに
著者書籍
・「何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術」
・「そもそも文章ってどう書けばいいんですか?」
・「伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則」 等々