モチベーション理論の第一人者が教える心に火をつける方法を紹介した一冊。やる気を上げる万能な答えはないが、人には8つのタイプがあり、医師が患者を治療するがごとく、それぞれの人の特徴に合わして、やる気を上げる治療をする必要があると著者は主張します。さらには、3つの軸、
・マインドセット
・フォーカス
・自身の有無
上記3つを軸にすることで、すべての人に共通する、やる気を上げる方法を本書では解説しています。
私も日々のモチベーションを上げる方法を学ぶべく、この本を手に取りました。
この本から得られるものとして、
・やる気を計る3つの軸の正体
・誰にも通ずる、やる気を上げる方法
本記事では、3つの軸と誰にでも通ずるやる気を上げる方法についてピックアップしていきます。それでは内容に入っていきましょう。
目次
マインドセット
マインドセットとは、考え方の癖、あるいは思考傾向のこと。私たちは次に述べる2つのマインドセットのどちらかを持っているといいます。
証明マインドセット
証明マインドセットを持つ人は、自分の能力の証明に焦点を当て、エネルギーを注いでいます。すなわち、人に自分の能力を見せつけ認めさせようとしているのです。(p.12)
自分と他人をいつも比較し、助けを求めることをしないというのです。
困難にぶつかった時には、不安に押しつぶされてしまう、あきらめてしまうなどの特徴があります。
課題や目標にとらわれすぎていて、そこに至るまでの道筋やプロセスを楽しむ余裕がないのも特徴とのことです。
成長マインドセット
成長マインドセットの持ち主は他人の目をあまり気にしません。他人が自分をたとえ認めてくれなくても、やると思ったことをやります。(p.16)
困難に直面したときも粘り強く頑張り続けるという特徴があるといいます。
私たちは、固定的に「証明マインドセット」「成長マインドセット」のどちらかを持つわけではないとしていますが、明らかに「成長マインドセット」を持つことが有利に働くということを強調しています。
フォーカス
2人以上の人たちが集まって共通の目標に向かおうというときには、たとえ同じ目標に向かっていても、そのアプローチは当然1つではないとし、2つのフォーカスで説明しています。
獲得フォーカス
獲得フォーカスの人は称賛を得ることに動機づけられるとし、特徴としては、
・やる気とは情熱、何かに向かって突き進む
・多くのことに手を出す
・仕事を先延ばしにする
等々
回避フォーカス
回避フォーカスの人は批判を避けることに動機づけられるとし、特徴としては、
・やる気とは自衛的、どこかに危険がないかを気にする。
・始めたことは最後までする
・最初から時間を多めに見積もり、期限までに仕事を完了できるようにする。
等々
「獲得フォーカス」と「回避フォーカス」はどちらのフォーカスも成功のためには必須となります。
自分と相手のフォーカスを理解して、それぞれが最高の力を発揮できるようにしていく。それこそが最も大切なことです。(p.30)
無理に自分のフォーカスを変えようとする必要はまったくなく、獲得と回避のどちらにしても、そのよさを活用していけばいいと主張します。相手と自分をしっかり観察し、どういうフォーカスを持っているかを見ていくことが必要だと言っています。
自信
自身は目標を達成するためには必須の要素
目標が高ければ高いほど自信の有無がものを言いますし、たとえ困難を極めても、粘り強くやり抜く力を与えてくれるとするなかで、ただの自信ではなく、確信が必要と言います。
その確信について、社会心理学の分野で大きな貢献をしたアルバートパンデューラが提唱した「自己効力感」が大切であると主張します。
「自己効力感」とは、望む結果を得るために必要とされる能力が自分にはあるという確信のことを言います。
「自己効力感」の4つの要素とし、
・成功体験
・他者の体験から学ぶ
・他者からの保証や警告
・その時々の私たちの気分
を挙げています。
一方で著者は、ポジティブシンキングと自信の違いについても言及しています。
ポジティブシンキングの問題点
ポジティブシンキング(積極的思考)について、その効果を褒めたたえる人が多いのは事実する中で、想像するだけですべての成功をつかむことができると証明した研究は一つもないと主張しています。
また、ネガティブシンキングについては、評判がとても悪いが、「良いネガティブシンキング」があるといいます。
目標を達成した場面ばかりを想像して、そのための準備を何もせずに待っている人よりも、目標を達成するために乗り越えるべき障害を考え、自分にはそれを乗り越える力があると信じて対応策を検討する人のほうが、成功する可能性はかなり高いのです。
(p.39)
起こり得る問題を見据えて代替案を持つといったネガティブに見えるようなことも、高い自己効力感を持つ人は自然にやっているとのことです。
すべてのタイプに共通する処方箋
第一段階
証明マインドを持っていたら、それを成長マインドセットに変えるようにしましょう。(p.76)
第二段階
必要なスキルを身に付けましょう。スキルとともに自信もつけるようにしましょう。2つのフォーカスそれぞれに学習の仕方とスピードは異なっているので注意してください。(p.76)
第三段階
それぞれのフォーカスを理解して、それに合ったやり方でさらなる成長を目指しましょう。フォーカスによって、ピンとくる戦略も報酬も環境も違います。最も力を発揮しやすい状況を整えましょう。この最終段階には終わりがありません。常に自分やその人のフォーカスに合った環境を作っていくことがやる気の持続につながります。(p.76)
最後に、第一段階の自分のマインドセットをシフトする方法を取り上げます。
自分のマインドセットをシフトする
成長マインドセットを持っていなければ、いくらスキルを教えても学ぶ器がなく、いくら自信を持つことを教えてもその自信が空回りしてしまうからです。
証明マインドセットを持っているがゆえに起きる不安感、拒絶されることへの恐れ、自分を守ろうとして築く壁は私たちの学ぶ力を阻害します。(p.78)
続けて、マインドセットをシフトすることは簡単なことではないとした上で、シフトするためのステップを紹介しています。
【ステップ1】目標を考える時には「成長」を意識したものにする
トリガーワード(引き金になる言葉)を使ってみるようにしてください。
・学び
・改善
・発展
・成長
・前進
・将来的に
(p.80)
あくまで。「証明」するのではなく「成長」することを念頭に置いて言語化してください。
【ステップ2】if-thenプランニングをする
「こうなったらこれをする」とあらかじめ決めておくのが、if-thenプランニングです。習慣化するの必要な思考となっています。
【ステップ3】期待値を変えてみる
能力があれば何でもうまくいくという考え方を捨て、困難や難題にぶつかったときには逃げたり手っ取り早く解決しようとしたりするのではなく、腰を据えてじっくり取り組むことが必要と考えるようにする。
【ステップ4】他の人と比べない
比べるのは他人ではなく、昨日の自分と今日の自分であるべきです。日々前進していくこと。
【ステップ5】根気よく続ける
気がついたときに自分のマインドセットを変えることをしていけば、そのうちに自然にできるようになるといいます。あきらめずに続けていきましょう。
思考や行動の話になりますが、どれも直ぐに実践できる内容になっています。日々の仕事や私生活に取り入れていきたいと思います。
まとめ
最後に著者は、
まずお願いしたいことは、「医者よ、汝自身を治せ」ということです。マインドセット、フォーカス、自信の3つの軸を、まずあなた自身を理解するために活用してください。
(p.101)おわりにより
といっています。自身を理解し、自身が変わらないことには他人を変えることはできない、そういっているように感じます。今回紹介できなかった8つのタイプについても、タイプ別に症状と治療法がまとめられています。
日々のやる気を出すため、自身に活かすためにも、皆さん心を燃やしましょう。
ぜひ手に取ってお読みください。
著者のプロフィール
著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン
社会心理学者。コロンビア大学モチベーション・サイエンス・センター副所長。モチベーションと目標達成の分野の第一人者。
本の目次
序章 やる気を上げる方法は1つではない
第1章 2つのマインドセット…「証明」を求めるより「成長」を目指そう
第2章 やる気のフォーカス…「獲得」か「回避」かを知って強みにする。
第3章 自信は必須の要素
第4章 やる気から見た8つのタイプ
第5章 すべてのタイプに共通する処方箋
おわりに
著者書籍
・やり抜く人の9つの習慣―コロンビア大学の成功の科学
・やってのける